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メディカル・ニュース

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2011年06月号 「医療機関の組織マネジメントについて」

○はじめに

 多くの医療機関で、頻繁に話題に上るテーマがあります。それは、医療機関に勤務するスタッフの意識や業務マネジメントに関することです。医療機関のスタッフの働きぶりやスタッフ間の連携は、患者さんにどのように映っているのでしょうか。患者さん側にすれば顧客としての期待が大きいほど、期待と現実のギャップに驚かれることも少なくないようです。また、医療機関側にも病院スタッフに対する様々な期待と思いがあります。それは経営からの立場、診療現場からの立場によっても当然違ってきます。

 

○人手が足りないという現状認識

 医局スタッフで必ずと言っていい程、耳にするのが人手不足を嘆く声です。病院の規模や種類によって違いはありますが、例えば急性期病院では、救急に対応する医師の確保の問題や手術をする際の麻酔科医師の不足の問題が多いようです。看護スタッフもまた悩みが多いようです。最も大きな問題は、夜勤をするスタッフの確保が困難であることです。女性の職場といわれるだけに中堅クラスの看護師の出産や育児による、休退職の問題も深刻です。また、2交代や3交代などで研修やトレーニングに参加できない、或いは開催が困難であるなどの問題もあります。コメディカルも、一人部署や少人数で構成されている部署は交代が困難なため、休暇が取り難い状況があります。事務系職種においては、業務が多岐に亘ること、さらには加えて職務分掌もはっきりしないなど、様々な課題が生じているようです。

 

○職制や職種で現状認識が違う

 管理職や一般職といった、職制による違いはどうでしょうか。同じ医師でも院長、副院長と医局スタッフ、すなわち経営職層と一医師の視点では、一つの同じ事象に対しても認識が異なることが多くあります。経営職層は「ベッドの稼働率が低い。」という問題意識を持っていても、一医師の立場では、「一人ではそんなに患者を診察できない。」という思いがあります。看護部でも看護部長や師長は「もう1人前なのだから夜勤はできるでしょう。」と考えている一方、スタッフレベルでは、「ちゃんとした教育や研修も受けていないし早すぎると思う。」と考えているかもしれません。コメディカルでも同様です。事務職に対しては、「事務員は人数が多いのだからもっと応対をちゃんとして欲しい。」といった目で見られることが多々ある一方、事務職員にすれば「決まった仕事以外の仕事が多すぎて自分ばかりに負担がかかる。」といった不満を持っているなど、職制や職種によって現状認識に大きな開きがあるケースも少なくありません。

 

○ゼネレーションギャップによる意識の違い

 世代による意識の違いは、民間企業でも良くみられますが、病院内にも存在します。医師では、満足な医療機器や専門医制度がない中で、何でもこなしながらスキルを磨いてきた熟年世代に対し、今は、専門性を求められ、医療訴訟と言うリスクも抱えています。看護師においても、自分自身の経験不足や先輩看護師の指導に理解は示しながらも、看護観の相違やITスキルの不足に不信を抱く若年世代の看護師がいることも事実です。また、コメディカルや事務職においても同様のゼネレーションギャップが存在します。「近頃の若い者は・・・」という普遍的トピックは、医療の世界でも確実に存在します。

 

○個人の能力をベストプラクティスにするものが組織

 病院では、様々な職制・職種の人がそれぞれの役割を果たすことが求められます。組織作りの最大の意義は、一人の力ではなし得ないことを多くの個人の力を合わせることで達成可能にすることです。つまり、個々の力は、組織の目標に向かって働くことが求められます。各職員がばらばらに動いていたのでは、組織の規模が大きくなればなるほど、スタッフ間の意識のギャップも拡大してしまいます。
 職種、世代、立場により多様な考え方を持つ個人をまとめ上げ、組織の能力を高めていくうえで「コミュニケーション」の果たす役割がいかに重要であるかは言うまでもありません。しかしながら、こうした組織形成におけるコミュニケーションの重要性は、誰もが認識しているにもかかわらず、何故うまくいかないのでしょうか。それは、すべての職員が共有できるイメージ=即ち価値基準が具体化されていないことや、共有されていないことに起因するケースが多いようです。こうした場合、病院の理念を具体的な行動指針や目標に落とし込み、それを共通言語としてコミュニケーションを図っていく習慣の定着化が極めて重要となります。

 

○組織の達成目標と組織形成≠個人プレーの集積

 病院組織の風土を変革し、スタッフ全員の意識改革を促す取組は、誰か一人が頑張ってもなかなか実現できるものではありません。病院全体で戦略的・計画的に、しかも本気で実行しなければなりません。それには院長や事務長、看護部長のリーダーシップはもちろんのこと、現場の先端にもリーダーシップが求められます。患者に最も身近に位置し、かつ多くの接点を持つ現場スタッフが、スタッフ中心ではなく患者中心の視点を持つことが、医療安全と効率性の推進エンジンとなり、結果として経営改善にも大きく貢献するのです。業務量調査や職員満足度調査、患者満足度調査などの内外からの分析も有効です。数値化することで、自院の現状を経時的に把握することや他医療機関との比較により立ち位置を知ることも可能となります。

 

○人材に投資をすること≠人手を集めること

 また、労働集約型産業である医療機関にとっては、人材への積極的な投資が求められます。とりわけ、その部署や診療・検査・ケアなど職務内容に相応しい資格・スキルを持つスタッフの適切な配置が重要です。資格はもちろんですが、教育・訓練・研修を受けていることが重要で、人数が多くても意味がありません。第二に、方針や手順がスタッフ全員に理解され、また実行させるためのリーダーシップが発揮されていることが重要です。病院組織としても、部署においてスタッフのスキルについて評価し、教育・訓練・研修を実施する必要があります。第三に、施設や設備に対する投資と同様に、人材に対する投資が計画的、戦略的に実現されることが重要です。安全と効率は背反すると思われがちですが、本当に重要なことに焦点を当てていけば、無駄な行為や意味のない習慣は見直すことができます。それだけでなく病院組織本来の機能が発揮されることで患者からの評価も高まるなど、人材投資による組織最適化こそが最も有効な経営手段といえるでしょう。

 

MIFコンサルタント 浅田 年愛