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メディカル・ニュース

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2011年08月号 「伸び悩む医業収益と戦略的コスト管理について」

○目前に迫った医療・介護同時改定が医療経営に及ぼすインパクト

 医療・介護のニーズは多様性を増し、もはや単純な医療制度では対応できなくなる。当面は収入が伸びない中、如何にして病院経営を継続的に発展させてゆくか。

 

①社会保障財源について

 医療政策における財源問題は、もとより3月11日の東北大震災発生前から、深刻な課題として存在していました。2年毎に改定される診療報酬と3年毎に改訂される介護報酬。来年の2012年は、これが同時改訂となるうえ新たな高齢者医療制度構築の問題を含め、医療介護の将来を見据えた長期的政策が望まれています。財務省の試算によれば、2015年には社会保障の充実に新たに3.8兆円の拠出が見込まれる一方で、給付の効率化・重点化による縮減額は1.2兆円との見通しから、財源不足は約2.7兆円に及ぶとしています。このため2010年代半ばまでに消費税を社会保障目的税化したうえで、税率10%まで段階的に引き上げ、税収を13兆円にすることで社会保障財源に充てたいとしています。 なお、こうした消費税増税のほか、法人実効税率の引き下げなどを盛り込んだ税制改革は、「経済の安定が条件」とする弾力条項が追加され、景気動向によっては先送りの可能性もあるが、これまで決まっているB型肝炎訴訟和解金3.2兆円と今回の震災復興財源を併せて臨時増税で賄う案の内容は下図のとおりです。

 

 

規模

性格

財源

税と社会保障の一体改革

13.5兆円

恒久増税

消費税10%に引き上げ
(IMFは15%を提言)

震災復興の財源

10~30兆円超?

臨時増税

所得増税(復興国債)

B型肝炎訴訟の和解金

3.2兆円(30年間)

臨時増税

所得増税

 

②医療・介護の2つの改革シナリオ(政府・与党の「社会保障改革に関する集中検討会議」)

 今後の医療・介護の改革イメージに関して、2つのパターンによる改革シナリオが提出されました。 基本となるパターン1は病院の区分を現在の医療一般病床107万床を高度急性期18万床、一般急性期35万床、亜急性期・回復期リハ病床26万床に分類しさらに地域一般病床24万床を加え103万床とするシナリオです。パターン2は一般急性期や軽度急性期の割合を減らし、療養病床を1割程度増やすものとなっています。精神病床に関してはパターン1、2とも同様に35万床から27万床へと大幅に縮減する提案となっています。考え方としては医師・介護職員等人材確保、機能分化と役割分担、在宅医療・地域包括ケア、認知症ケア強化・介護予防を進めながら在院日数の短縮や機能分化と役割分担、在宅医療・地域包括ケア、認知症ケア強化・介護予防にフォーカスをあて効率化も並行して進めるというものです。経営面でもさらにサービス提供に係わるプロセスのシフトや効率化が求められる内容です。特に精神病院では大きな変革を迫られています。具体的には今後の政府の政策発表や国会の審議が待たれるところであります。

 

○医療機関がすぐに取り組むべき経営努力とは=戦略的コストダウンの取り組み

 医療収入が伸びないなか、医療機関経営に関し、更なる経営努力が求められることは間違いありません。収入が伸びなければコストを抑えるしかなく、これは経営者でなくとも容易に想像のつく対策ではありますが、この誰もが考えることが正しくできているのかと言うとそれほど単純な問題ではありません。そこで今回は経費削減=コストダウンを組織的・戦略的に考えることの重要性について考察してみます。

 

①コストダウンとは何か

 会社の業績が下がると、まずは利益をあげる即効薬として「コストを下げろ、コストを削減しろ」の大合唱が起こるものです。しかし、掛け声だけのコストダウン活動には、実効ある大きな成果は期待できません。コストダウン活動に取り組むためには、より組織的に、より科学的にねばり強い活動を展開していくことが極めて重要なのです。
 コストダウン活動に取り組んではいるものの、なかなか成果が上がらないケースも多い理由として以下の要因が考えられます。

 

・経営トップ、部門責任者の理解不足

・コストに対する認識の甘さと管理手法の欠如

・コストダウン技術の不足

・コストダウン技術を適用する範囲とタイミングのミスマッチ

・無計画で場当たり的な展開

・各部門間の協力体制の不備

・責任者の不在と設定目標のあいまいさ

・継続的な活動への意欲不足

 

 これらの問題を最小限に抑え、コストダウンの成果を確実に出して行くためには、常に結果をチェックし、次なるコストダウン活動につなげていく必要があります。

 

②コストダウンに対する戦略的視点

 コストを科学的に分析し、どうしたら最も経済的になるかを明確にしていくことが、コストダウン活動を考えるうえで大切なポイントです。また品質向上とコスト削減を両立させるというコストマネジメントの視点も重要ですが、ここでは最適なコストをかけると言う観点で、コストコントロールコストリダクション(cost・reduction)という2つのコストダウンアプローチ手法について考えてみたいと思います。

 

●コストコントロール(原価維持活動)→実質ロスを無くす

 コストコントロールとは、業務の現実コストに対し

・材料にムダはないか。

・人員にムダはないか。

・設備にムダはないか。

・エネルギーにムダはないか。

 

 などのコスト統制におけるムダの排除によって、コストを低減していくことです。

 

コストコントロールでは、従業員に与えられた仕事が計画通りに遂行できるかどうかが問題視されます。例えば

・計画(標準)が立てられているか・・その立て方は適切か

・計画(標準)は知らされているか・・その知らせ方は適切か

・実績は計算されているか・・その計算の仕方は適切か

・標準と実績の差を把握しているか・・その差のつかみ方は適切か

・差を埋める行動はとられているか・・その行動の取り方は適切か  といったことが具体的活動として挙げられます。

 

 計画通りに仕事が進まないと、計画した標準コストと現実(実質)のコストとの間に差(ロス)が生じます。つまり実質ロスをなくすことがコストコントロールの目標です。そして、その差を埋めるためにコストダウン活動を実行してきます。

 

●コストリダクション(原価低減活動)→機会ロスを無くす

 コストリダクションとは、いわゆる標準コストを引き下げることを意味します。現在の標準値若しくは予算枠とされているコストの大きさは、現在行われている様々な活動やシステムを前提に導かれ既定値とみなされた数字です。したがって、コストダウンを図るには、こうした現行方式よりも一層経済的な方法やシステムに見直すことによって、そもそも規定値とみなされているコスト(標準値や予算枠)そのものを引き下げる活動が重要となります。つまりこの活動は、現在のシステムや管理方法などを変えてもよいから、より安価で迅速な代替方法やシステムがないかといった視点での改善活動となるものです。いわば高い標準コストが設定され、その結果生じてしまう機会ロスを削減するための活動でもあります。この改善を進めるうえでポイントとなるのは、標準コストより更に低い、いくらでやれるかという目標コストを設定することです。

 

③コストダウンの考え方

 コストダウンを考える際には、実質ロスをなくすためのコストコントロールと、機会ロスを排除しょうとするコストリダクションとを完全に分けて検討する必要があります。コストコントロールとは、標準(コスト)を適切に設定し、標準値を遵守させるとともに、きちんと守られているか否かを確認する管理手法です。一方、コストリダクションとは、現在の標準コストのベースとなっている要素・要因を改めて見直し、求める成果や妥協できない品質レベルなど必要とされる機能を明確にし、その機能が維持できるならば、簡素化はもちろん、ゼロベースでの投入資源の組み替えなども厭わない、つまり手法そのものを見直す管理手法のことです。前者の「標準を守らせるための管理」と後者の「標準を変えるための管理」は、全く違った管理技術です。

 

 コストコントロールは、診療部門などの現場(ライン)を中心に実施されており、予め設定された標準コストを厳格に維持しながら日々の診療活動などを行うものです。コストリダクションは、事務や企画部門(スタッフ)で実施されており、目標コストの設定からはじまります。コスト削減と言う言葉の持つ意味合いは広く浸透しているものの、それが組織として適切かつ効果的に実践できているかとなると、まだまだ不十分な医療機関が多いのではないでしょうか。コストダウン活動は「コストコントロール→コストリダクション→コストコントロール→コストリダクション」という考え方を基に、それぞれが適切な部署・タイミングで実行されることが重要であるとともに、「実質ロス削減→機会ロス排除→実質ロス削減→機会ロス排除」の反復継続ができてこそ大幅なコストダウンに繋がるのです。

 

MIFコンサルタント 浅田 年愛