2011年11月号 「2012年診療・介護報酬同時改定にむけての動き」
○はじめに
今回の診療報酬改定では、「大震災の影響や今後の財政を考えるとプラス改訂は望めない、計画にも遅れが生じているのではないか」と囁かれています。来年度の診療報酬改定については、現在徐々に情報が出ているところですが、概ね当初のスケジュールに沿って進むものと考えられます。現在は内閣の社会保障・税一体改革成案(6月の政府・与党社会保障改革検討本部決定)に沿って、①スケジュール→②視点・方向の概論→③具体的な視点・方向→④基本方針案と言う流れで検討が進み、12月に改定率が決定される予定で審議が進むと見られています。さらに改訂率が決まると具体的な項目について配分が決まり、来年2月には答申の運びに至るものと思われます。
○2005年から2025年までの高齢化の見込み(増加の60%は都市部に)
~地方では人口減に直面する看取りに注目が・・・、都市部では急速な高齢化が医療・介護の連携を促す構図に~
高齢化の進み方をみますと東京都、神奈川県、大阪府、埼玉県、愛知県、千葉県、北海道、兵庫県、福岡県で、全体の増加数の約60%を占めています。高齢化は、こうした都市化傾向が進んでいる一方で、地方における高齢化のスピードは鈍化し人口減へと向かう傾向にあります。歯科診療などでみますと小児の虫歯治療は減少し(12歳児一人平均虫歯数は平成元年に比べ約7割減少)、高齢者の口腔ケアが増加するという状況にあります。今後の診療報酬はこのような社会の変化に対応したものが求められます。
前年度の改定後(H22年4月~H23年2月)における医療費の伸び率を経営主体別で見ると、大学病院が11.7%、公的病院が9.6%民間病院が5.1%の順となっています。大規模の公立・公的病院の伸び率ばかりが目立ちます。本当にこれで良かったのか疑問も残るところではありますが、来年度の改定では大震災による国家財政の逼迫もあり、医療費財源の問題がさらに深刻化すること、6年に一度の介護保険との同時改訂であること等から、中・長期的な改革といわれる社会保障・税一体改革の内容が注目されるところです。
○社会保障・税の一体改革に関する検討ポイント
【医療・介護等で特に注目される項目】
►地域の実情に応じたサービスの提供体制の効率化・重点化と機能強化が求められます。
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病院・病床機能の分化・強化と連携、地域間・診療科間の偏在の是正、予防対策の強化、在宅医療の充実等、地域包括ケアシステムの構築・ケアマネジメントの機能強化・居住系サービスの充実、施設のユニット化、重点化に伴うマンパワーの増強。 |
►保険者機能の強化を通じて、医療・介護保険制度のセーフティネット機能の強化・給付の重点化が求められます。
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被用者保険の適用拡大と国保の財政基盤の安定化・強化・広域化・ 短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、市町村国保の財政運営の都道府県単位化・財政基盤の強化。 |
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高度・長期医療への対応(セーフティネット機能の強化)と給付の重点化・高額療養費の見直しによる負担軽減と、その規模に応じた受診時定額負担等の併せた検討(病院・診療所の役割分担を踏まえた外来受診の適正化も検討)。ただし、受診時定額負担は低所得者に配慮。 |
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後発医薬品の更なる使用促進、医薬品の患者負担の見直し、国保組合の国庫補助の見直し・高齢者医療制度の見直し(高齢世代・若年世代にとって公平で納得のいく負担の仕組み、支援金の総報酬割導入、自己負担割合の見直しなど) |
○今年までの調査・検証による問題点
(在宅歯科治療)
要介護高齢者の約74%で何らかの歯科治療が必要であるにもかかわらず、実際に歯科治療を受診した者は約27%に過ぎない。
(在宅における薬剤師業務 )
在宅患者等における薬剤に関連する問題として、薬剤の保管状況、薬剤の飲み忘れ・飲み残し、服用薬剤の理解不足などが指摘されており、これらの問題の改善のためにも薬剤師関与の必要性は高いが、実際に在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している薬局は1割に満たず、少ない。
○医療保険・介護保険算定上の課題解決の予想
(調剤薬局)
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薬局規模の現状等を踏まえ、薬剤師の人数が少ない薬局における在宅薬剤師業務を進める上で、医療保険においての具体的対応 |
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一部の高齢者向け住宅・施設の入所者に対する薬剤管理指導 |
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医師からの指示を受ける前に薬剤師が訪問し状況把握を行う指示前の訪問の診療報酬上の評価 |
(訪問看護)
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訪問看護ステーションにおいて、看護職員とその他の職員で役割分担を進めて効率的に訪問した場合の評価 |
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在院日数短縮の中、退院直後についての期間を限定して訪問看護の回数制限のない対象者の範囲を拡大の評価 |
(退院調整)
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退院後の療養生活支援も含めた詳細な入院診療計画の説明や指導について、退院後の生活を見越した退院支援計画について入院早期あるいは外来で行う |
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入院中から在宅を担う医療機関や訪問看護ステーション等の連携につての評価。 |
(在宅療養支援診療所・病院)
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緊急時の2 4 時間連絡対応を行う看護職員等の配置など、システム的な対応を行っている在宅療養支援診療所の評価 |
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入院機能を有する医療機関との連携等により24時間対応、緊急入院体制を確保し、自院で看取りを行っている在宅療養支援診療所等の評価 |
(リハビリテーションについて )
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医療と介護の機能の一層の明確化。 |
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外来でのリハビリ提供時には基本的な診察を前提としていることについて、患者の状態像やリハビリ提供時の急変 |
○病院医療従事者のマンパワーについて
(医師の長時間連続勤務への対応策) |
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当直明け勤務免除や交替制勤務への評価 |
(薬剤師の病棟勤務) |
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薬剤師による積極的な処方の提案等による医師等への負担の軽減 |
(看護師の勤務実態) |
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看護職員の夜勤体制は二交代勤務における長時間連続勤務や三交代勤務における短時間間隔の勤務等 |
(他の医療機関等との取組み) |
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外来診療や救急外来は医師にとって負担が大きいが、地域全体の連携で効率的な外来医療を行い、医師の負担軽減に資するよう地域の拠点病院が一般外来の機能を縮小する取組みへの評価 |
○今後の展望 ~医療・介護が成長産業としての成果における実績数値に注目~
社会保障分野の「総波及効果」は公共事業より高い数値を示し、「雇用誘発効果」は主要産業より高い数値を結果として出しています(H22年5月:厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室資料)。医療費や介護費は、経済成長を考えた場合、長らくコストとして位置付けられ、医療政策も極力これを抑制しようしてきたところですが、医療・介護が経済成長の望める分野としてのエビデンスが得られたことから、今後の医療政策は、これまでの抑制一辺倒からのシフトも考えられるところです。
MIFコンサルタント 浅田 年愛


