推定では全国の医療機関が抱えている未収金は1000億を超えているとも言われている。退院時に「所持金不足」「時間がない」等を理由に支払い猶予を求められ、清算が未了で退院させた後に回収は遅々として進まないといったケースが典型的であるが、中には確信的な支払拒否や、「職員の対応に対する不満」を引き合いに支払を拒否するケースもある。
ケース 退院後に治療費の支払い拒否をする患者家族
認知症が進んだ78歳の男性患者M は東京都の介護老人保健施設Z に入所した。施設側は、施設職員だけで面倒を見ることは困難と判断し、家族(M の妻)に協力を要請。このため、M の妻が施設内で介添えに当たるようになるも、目が離せず、結局は朝から自分がM に付き添う機会が増加。疲労が蓄積していくうち、次第に施設に対する不信感を募らせるようになった。とりわけMの夜間の不穏が激しく、数日間泊まり込みでベッドを並べ傍にいたこともあったようだ。M の妻同様、娘も「入所させてもお母さんの負担は変わらないじゃないの!」と施設に不信感を抱いていた。退所の際、「所持金をもっていない」という理由で未精算となった。その後3ヶ月間ほど請求書を送るも入金はなく、施設側は未収金と判断。電話での入金要請に対し、当初は「払います」と言っていたが、督促を重ねるうち、その姿勢も次第に頑なな口調に変化。施設は困り果て、職員2名で自宅を訪問したところ「あんたのところの職員に不満がある」との一点張りで、話し合いにならなかった。今なお、その未収金は回収出来ない状況にある。
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最も問題視すべきは「意図的な支払い拒否」であるが、何も患者側が初めから未払いを意図しているとは限らない。施設側の対応、あるいは職員の言動に対する不満の積み重ねが、こうした問題を誘発している事象も多々あるのだ。今回のケースが、正にその典型と言えよう。患者M の家族は、M が入所している最中、介護を家族に押しつけるかのような施設の態度に不信感を抱き、それを言い出せないものの、不満は鬱積していたのだ。その不満に気付けなかったうえ、電話での口調の変化にも気づかず、柔軟な対応が取れなかったという問題も潜んでいる。時間が経てば経つほど、問題は厄介になる。「そのうち払ってくれるであろう」という悠長な考えを捨て、迅速に対応しなかったこと、そして、そもそもの未払いの原因とも言える、患者若しくは患者の家族の不満に気づくこと、この2点が今回のケースのポイントになる。
【対策】
○「未収」であることを認識する
「そのうち払ってくれるであろう」と悠長に構えていては、未収金は増えていく一方である。「患者の不払い」は「未収金」であると認識する必要がある。「数ヵ月後には入金してくれるであろう」では遅いのだ。
○「未収」となった要因を把握する
早期に未収の要因となった問題点の把握に努める必要がある。今回のケースのように、妻の不満を把握していない場合、時の経過とともに解決策を講ずることはより難しくなる。
○継続的に職員教育を行う
施設側の対応への不満が未収に結び付くケースに対しては、患者、その家族に対して、細やかな配慮ができるよう、接遇教育を継続的に実施することも有効な対策である。


